ナイチンゲールは英語で、フランス語ではロツシニョオルという。日本語では西洋うぐいす、夜うぐいす――と言ってるが、うぐいすの種類ではない。
歌の声が美しい鳥だというところが、うぐいすと同じというだけだ。夜鳴くといって、とぎすの類でもない。
ミソサザイ科の小鳥で、見たところは形も大きさも、うぐいすに似ている。色は赤茶けていて腹だけが白っぽい。歌は、ホオホケキヨのような短く簡単なものではない。複雑で長い。
ベートーヴェンの第六(田園)交響曲のなかに出てくるトレモロだ。夜、女の子を呼び出すのによく、これが口笛で吹かれる。
ジヤン・コクトーの映画、新編「トリスタンとイゾルデ」の中に、この口笛が何べんも出てくる。北緯五十度に近いパリの夏の短か夜だ、夜中でも薄明るい。
森に近い山の手の住宅街では、よく聞く。女中でも呼び出しに来たのかと、カーテンの隙から覗くと、人影はなく、大木のてっぺんに、本物のロツシニヨオルが止まって、仰向いて、喉をふくらましてるのが影絵のように見える。
夜鷲