ラウド・スピーカーとはいわなくなった。ただスピーカーとだけで、ラウド・スピーカーを意味する。拡声機などという言葉は、無理に使えば、わから・ないでもないが、古い過去の言葉になった。
ラジオも始まったころは、機械の屋根の上に、クェスチョン・マーク型の首のあるラッパが乗っかっていた。大いに目立つ物だったから、ラウド・スピーカーも幅をきかした。それが、次には機械の中におさまるようになって、普通には日につかず、忘れられてきた。
内臓スピーカーでなく、分離スピーカーの時だけが、スピーカーといわれる。ロータリー・クラブでは、講演者のことをスピーカーという。スピ1クする人間だからスピーカーとなるわけ、このほうが本当なのだが、それでも「本日のスピーカーは渡辺さんです」といわれると、なんだか、機械あっかいにされたような気がしないでもない。
アナウンサーはアナウンスする人間の意味だが、アナウンスというのは、必要なことだけを簡単明瞭にいうこと。英語で「鶏の鳴き声は夜の明けたのをアナウンスする」という。「告げる」である。
アナウンスはフランス語のアノンスから来ている。アノンスは「広告」「告示」であり、新聞の「三行広告」のことをプチタノンス(小告)という。
余計なことを(ご免なさい)長々と、しゃべるのはアナウンサーのするべきところにあらずである。アナウンサーは長いから略して「アナ」という、どこかの方言では「穴」みたいに発音される。
英語ではフランス語伝来のアナウンサーというが、さてフランス語では、アナウンサーと同語系のアノンシァトウル(女ならアノンシアトリス)というのは、場内放送者に限る。
「第三のコース」とか「何々さまに申し上げます」とか、スポーツ大会やデパートのそれである。
「アナ」に相当するフランス語はおかしなことだがSPEAKERという。英語のスピーカーだが、フランス式に発音してスピキュールという。
スポーツ放送を聞いてると、アナというよりはスピーカー(おしゃべり)というほうが感じが出る。アナ諸君、ラジオの時の癖で、テレビでも「構えました」、「打ちました」は、うるさいぞ。
スピーカー