ビデ

フランスの法律で、ホテルのトイレットには必ずビデという物を具え付けることになっている。ギターの形になった洗面器みたいなもの。タイル製、コックを捻ると冷水と熱湯が出るところは洗面器そっくり。
ただ、台が低い。背の低い稀音屋佐吉(今は故人)が「子供用の洗面器が低くて便利ですねえ」といった。「ありゃ、センメンキではない、センマンキだ」と言われてびっくり、目をこすったが、もうおそい。
ギターみたいになってるのは、まん中の、くびれを両膝で挟んで馬乗りになる仕かけ。小さな馬のことをビデともいうのはそのわけ。
事前、事後に婦人が底辺を洗う仕かけである。洗面器と違って、水と湯は横からではなく、真中から真上に噴水みたいに飛び出す。
勝手知らないのが、コックをいじると、天井まで噴き上げて大騒ぎ。日本の駅にある水飲み用の水道に似ている。
湯加減をほどよくしないと、熱湯で、大切な部分を火傷する。最近パリへ行って来た式場隆三郎先生の話では「人口増殖の国策にのっとって、ド・ゴールになってから、熱湯の出が、ゆるくなり、勢よく、天井に達するほどのものは禁止だ」という。
現在のピデは、白タイルの作りつけだが、古い時代のは、染付け模様の陶器の水盤で、なかなか雅趣がある。これを骨董屋から買って来たら、私の女房は剣山でアヤメを生けていた。
パリの安ホテルに泊ると、このビデの音で悩まされる。向う三軒両隣りだが、これが立体で頭の上でもジャーと音がする。はるか上のほうのも、かすかにシャーと谷川のせせらぎ。
新婚の日本人で、花嫁を残してひとりでパリへ来た男のよめる「ビデの音、夜更けて聞けば、君遠く、さすらひ来ぬる旅をしぞ想う」と業平ばりに、さめざめと泣きにけりという。
京都で、外国観光団専門の美術店で「ひさご型水盤」という陶器の花器を売っていたが、つ見ても売れ残っている。パリでは小型のものが灰皿になってスーブニール・ド・パリとして売っている。

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