丈夫な障子

テレビのカメラというものは、精巧な機械ではあるが、生きものの日とは違う。白いものハレーションを起こす。普通の写真のハレーションなら、物体の周りは白く、もやもやとするのだが、テレビのカメラではネガのハレーションで、黒い雲が出てしまう。だから、テレビには白という色は禁物である。世の中にある、もろもろの白いものは、ことごとく青である。青というと日本語では緑をも含めた総称であるが、英語でいうライト・ブルーが、テレビでは、ちょうど白く見える。
踊りの白足袋もブルー、紋付の紋もブルー、花嫁のツノカクシもブルー、台所姿のエプロンもブルー、白衣の天使とかいう看護婦もシヨオール・ブルーで、頭から足までつまり帽子も靴もブルーにしないと白くうつらない。
一番困るのは、障子だという。もちろん白い紙は使えない。青い紙を使っても、障子の感じではない。
あの半透明の、なごやかな光をふわりと通す和紙を張った障子の感じは、テレビで出すことはむずかしい。
紙を、ピンと張ると、くもりガラスと見分けがつかなくなる。そこで、いろいろ研究のあげく障子には、比較的目の荒い木綿の布を張っている、色はむろんブルー。
石原慎太郎とテレビに出た時、「どうです、この障子は…」と私がいうと、彼、頭をかいて、「この障子は丈夫でダメです」
(この言葉が、よく判らない人は「太陽の季節」を読んでください)

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