私の家は代々の漢学者。東大の支那文科、通称は漢文科を三番以内（実は全部で三人）で卒業してるから、少なくとも学歴からすると漢学者で通るわけ。
親譲りの陽明学が身についていて、知行合一の傾向が、いくらか私には、あるようだ。なにか具体的行動に出ないと、知識は本物ではないというのが陽明学の主義。
私は永年にわたって世界女性美を研究している。
巨大なよい形のヒップを見るととたんに手が出そうになる。ヒップなぞというとドレメ用語だが、これを翻訳すると尻である。ケツである。ドレメ学校で使っている言語のヒップ・パツディングも翻訳すると、ケツブトンで、お下劣になってしまう。
ナポリ博物館にある数多くの古代美術品の中にあって、一番の呼び物は、カリピゲのピーナスである。うしろの裾を高々とまくり上げて、ヒップの美しさを誇ってる姿。三千年以上前から美しいヒップというものはたいしたもの。男性たるもの自発的にその下に敷かれたくなる。

私が、いくら知行合一といっても、むやみに見知らぬ女性のヒップを撫でるわけではない。そんなことしたら、「チカン」のレッテルをつけられ、式場さんの病院に入れられてしまう。私には、きわめて、よくきくブレーキがあるからご安心下さい。
テレビの楽屋などで、顔見知りの女性には、時あってか知行合一を実行する。
「あなたのドレス、とてもいいですねえ。カルダンですか、それとも、あなたご自身のデザインですか……」などともちかける。たいていの女性は、キツネにほめられたカラスみたいだ。それから「このヒップは世界的水準だ」と、おだてながら触れれば、たいてい大丈夫。
テレビの係は私の学を知っているから、女性と隔離することになってる。私、夢声、ミス・ワールドと、並んでソファに掛けさせたが、私は、夢声の背中越しに、美人のヒップを触った。ミス・ワールドは「あら、いやらしい」といった顔を夢声老に向けて、席を外した。今だに犯人は夢声老だと思っているらしい。